著者・訳者紹介

《著者紹介》
 著者のムハンマド・アル・ファヒームは1948年8月、現在のUAEの首府である
アダビ島から東に約160キロのアラインのオアシスで生まれました。その地は当時
貧しい村で、現代医学の恩恵にあずかることもなく、母親は1962年出産時の病が原
因で亡くなりました。学校らしい学校もありませんでした。家族は冬をアブダビ
で、夏をアラインで過ごし、その間の移動はラクダの背に乗るしかありませんでし
た。父親が初代のUAE大統領シェイク・ザイドの親しいアドバイザーだったの
で、ムハンマドは幼年時代の一時期をシェイク・ザイドのアラインの宮殿で過ごす
という貴重な経験をしています。ムハンマドは、この本の中で実業家としての自ら
の成功物語を、アブダビの発展物語に見事に編み込んでいます。それは正に奇跡物
語です。

《訳者紹介》
訳者井上 信一は石油開発会社から派遣されて、アブダビで原油生産を行っている現地鉱業
所の責任者として1993年8月から1996年5月まで現地に勤務。その間に当時アブダビ商工
会議所副会頭を務めていた著者と知り合い、原本の面白さに惹かれて本人より独占翻訳権を
取得。翻訳本は原本と同じロンドン・センター・オブ・アラブ・スタディーズから出版。

 私たち日本人にとってアブダビ首長国、あるいはアラブ首長国連邦はほとんど知られていな
い国です。あるいはサッカーのアジア予選で戦う相手国として知っている方、競馬ファンならド
バイ首長国の競馬のことで知っている方もおられるでしょう。ドバイもまたUAEの一つの首長国
なのです。
 日本が消費する石油の供給国としてアブダビはサウジアラビアと一・二位を争う国なのです。
その意味で経済的には大変関係の深い国です。砂漠の国、オアシスとナツメ椰子の木、そして
天然真珠の生産地でしかなかったこのUAEが一世代にして、大都会を有する国、緑化された
地帯を有する国に変貌したその目まぐるしい現代史をこの本から知ることができます。1960
年代から始まった石油開発がこの国を変えてしまったのです。もちろん、その石油がもたらす富
がその原動力だったことは否めません。
 この嵐のような変貌の中で、ともすれば消えてなくなりそうなUAE、特にアブダビの伝統的な
文化、貧しい中でも豊かな伝統をもった民族の財産を愛おしむ気持ちで、この著者は筆をとっ
たのです。これまで外国人によって書かれたこの国の資料は多々ありますが、ナショナルが語
り部のように綴ったこの本は、この地の人々の生活の根源を知る上で、貴重なものと思いま
す。
 次のページには著者がこの本の序文としてまとめた文章を掲載してあります。これを読んで
いただけると、この本で著者が何を語りたかったが、はっきりと分かると思います。


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